やがて蕪木が到着したので、三人で二階へ上がりますと、佐藤は、
「筆と紙を用意せよ」
と言いますので、紙と鉛筆を持って来たところ、
「空売りはまかりならん。本月中は7円60銭以下はないぞよ。2月は8円30銭であるぞよ。汝らに財宝を授けつかわすが故、晴一の生まれた2月11日には、必ず祭りごとをせよ」
と言いました。
やがて夜の10時頃に佐藤の妻が尋ねて来て、このありさまを見て、夫は気が狂ったものと驚き、
「早くお医者を呼んで、注射をしてもらいましょう」
と泣き顔で言って、電話をかけようとしましたが、佐藤は二階にいて、聞こえるはずがないのに、
「医者など呼ぶこと、まかりならん!」
と言って、がんとして聞き入れませんでした。しかし、夜11時になると、佐藤は自然と本心に立ち返り、
「なんだ。俺はうちで居眠りでもしていたのかと思っていたら、島田さんの所か」
と、とぼけたことを言いました。
心配する佐藤の妻に、初代様は、
「もしも、こんなことがあったら、いつでもかけつけるから、電話してください」
と、約束して二人を帰しました。
「筆と紙を用意せよ」
と言いますので、紙と鉛筆を持って来たところ、
「空売りはまかりならん。本月中は7円60銭以下はないぞよ。2月は8円30銭であるぞよ。汝らに財宝を授けつかわすが故、晴一の生まれた2月11日には、必ず祭りごとをせよ」
と言いました。
やがて夜の10時頃に佐藤の妻が尋ねて来て、このありさまを見て、夫は気が狂ったものと驚き、
「早くお医者を呼んで、注射をしてもらいましょう」
と泣き顔で言って、電話をかけようとしましたが、佐藤は二階にいて、聞こえるはずがないのに、
「医者など呼ぶこと、まかりならん!」
と言って、がんとして聞き入れませんでした。しかし、夜11時になると、佐藤は自然と本心に立ち返り、
「なんだ。俺はうちで居眠りでもしていたのかと思っていたら、島田さんの所か」
と、とぼけたことを言いました。
心配する佐藤の妻に、初代様は、
「もしも、こんなことがあったら、いつでもかけつけるから、電話してください」
と、約束して二人を帰しました。