こんな出来事があったあと、初代様が、お得意先の菊地卯之助のところへ行きますと、ぜひ二階へ上がってくれとのことで、菊地の寝室へ通されました。菊地はリュウマチにかかっていて、寝たきりの生活を送っていたのです。
先日の話を亀田屋から聞いたのでしょう。菊地は、
「島田さんの祖先に神主でもした方がおりますか?」
と聞くのです。初代様は、
「いいえ。どういたしまして、私の実家は水飲み百姓で、神主どころではありませんよ」
と答えました。初代様は、小学校時代に、神様のことで、ずいぶん友だちにずいぶんばかにされたり、学校の先生などにひやかされたりしていましたので、神事に関してはかくして、いっさい口にしていなかったのです。ところが菊地は、
「あなたは知らないだろうが、調べてごらんなさい。何か神事にたずさわった方があるに違いない。第一、佐藤さんという人の状態はただごとではありませんよ。相場のお告げをなさるような神様はたいした神様で、稲荷様や地蔵様とはわけが違う。これは活き神様ですよ。私も大豆を買えるだけ買うから、島田さんも売ったのを買い越した方がよいよ」
と言いました。
先日の話を亀田屋から聞いたのでしょう。菊地は、
「島田さんの祖先に神主でもした方がおりますか?」
と聞くのです。初代様は、
「いいえ。どういたしまして、私の実家は水飲み百姓で、神主どころではありませんよ」
と答えました。初代様は、小学校時代に、神様のことで、ずいぶん友だちにずいぶんばかにされたり、学校の先生などにひやかされたりしていましたので、神事に関してはかくして、いっさい口にしていなかったのです。ところが菊地は、
「あなたは知らないだろうが、調べてごらんなさい。何か神事にたずさわった方があるに違いない。第一、佐藤さんという人の状態はただごとではありませんよ。相場のお告げをなさるような神様はたいした神様で、稲荷様や地蔵様とはわけが違う。これは活き神様ですよ。私も大豆を買えるだけ買うから、島田さんも売ったのを買い越した方がよいよ」
と言いました。